連合と創価学会ーー大規模中間集団における「会館」の都市社会学
1 はじめに――不可視化された中間集団の可視化の場としての「会館」
二〇二六年二月に行われた第五一回衆議院議員総選挙を前に、立憲民主党と公明党それぞれの一部が合流して新党「中道改革連合」が結成されたことは記憶に新しい。
中道改革連合を構成する立憲民主党の支持基盤とされるナショナルセンター・連合(日本労働組合総連合会)、公明党の支持基盤とされる新宗教・創価学会は、互いに労働者あるいは生活者同士の共助の組織としての性格を有しつつ、多数の組織内議員を通じ、生活の困りごとを地方・国政のレベルで政策に反映するという公助の機能を有している。この二組織は公と私を媒介するという点で「中間集団」(佐々木・金 2002)として捉えられ、その中でも公称七〇〇万世帯(創価学会)、会員数約七〇〇万人(連合)と、制度化・大規模化している点において共通だと考えられるだろう。
しかし、これほどにも大きな組織にもかかわらず、基本的にその活動は不可視化されており、また、何をやっているかわからない・信頼できないといった回答は各種調査でも数多く見られる。例えば、労働組合が勤め先にあるかどうかわからないと答える人は、二〇〇三年の九・七%に対し二〇二一年には二一・八%と明確に増加している(連合総研「勤労者短観」第四四回調査、二〇二一年)。また、宗教団体に関しては、七〇%超の人々が「ほとんど信頼していない」と答えている(JGSS-2023D「人や組織に対する信頼」より)。
中道改革連合の支持基盤の一部である連合と創価学会は、リベラルな価値観を支持しつつ、労働者・生活者としての日常的な組織活動を通じて共助と公助の価値を実践してきた。それにもかかわらず、「信頼できない」「あるかどうかわからない」といった評価を下されており、筆者の専門とする社会運動に好意的な人々でも、これらの団体に対し忌避的・懐疑的な人は少なくない。
そこで本研究では、これら二つの中間集団について理解を深めるために、彼らがどのような拠点でどう集まり、どのように公助・共助の主体として社会化されているのかを、全国に数多く見られる労働組合と創価学会の「会館」から明らかにしたい。労働組合や宗教団体をはじめとする中間集団は、労働組合会館や宗教会館、町内会館/自治会館や婦人会館、生協会館を通じ、勉強会や交流会を通じた地域の社会関係の構築など、さまざまな活動を行ってきた。このような会館は災害時や緊急時には相互扶助の拠点として活用されている実績もあるものの、中間集団の存在感の低下と忌避感の高まりとともに、大多数の市民にとって無関係な場として遠ざけられている。不可視化されてしまったリベラルな価値を有する中間集団として、本論考では連合と創価学会の「会館」を読み解くことにより、中間集団が現代日本において有する価値と意義の探索を試みる。
2 先行研究と分析方法――場の機能と活用を見る
2-1 創価学会と連合の「会館」研究
連合ないしその構成産業別労働組合と創価学会の両集団に関する研究は双方とも数多く、とりわけ創価学会に関しては、単体で研究として成立するほどの厚みがある(McLaughlin 2019=2024:浅山2017:玉野 2008 など)。創価学会研究は、創価学会という組織がきわめて多面的である点を指摘しており、その切り口は広報メディア(浅山 2017)から団地コミュニティ(小池 2025)、内部での任用試験(McLaughlin 2019=2024)といった観点まで多岐に亘るが、そのなかでもまだ研究が進んでいない領域に「会館」がある。
「会館」は、創価学会の勢力や規模を誇る象徴的な役割をなす場合もあれば(McLaughlin 2019=2024:五十嵐 2001=2022)、政策をめぐる実務的交流の場にもなるようだ(玉野 2008)※1。建築史的な観点から、新宗教建築の事例の一つとして創価学会の建築を論じた五十嵐(2001=2022)の研究はあるが、中間集団としての創価学会会館の役割・機能に関する研究はまだ見られない。
連合の場合、「会館」に関する研究としては、一九五五年に竣工した「総評会館」の研究が代表的である。総評(日本労働組合総評議会)は連合の主要前身組織のひとつであるが、総評会館は、建築界の民主化を求める戦後の建築運動集団であるNAU(新日本建築家集団、New Architect's Union of Japan)をその母体の一つとする建築研究団体連絡会を中心とし、各大学と建築事務所など幅広いセクターから、有名無名を含む約二〇〇名の建築家による「協同設計」として建築された(松井 1985)。建築主が請負業者を介さず労働者を雇用・管理することにより、建築家と建設労働者間の管理する・されるという関係の非対称性を解消し、労働者の中間搾取を排除することを目的とした「民主建設方式(民建方式)」が試みられたが、総評の組織体制の変更を機に建設計画が白紙撤回され、施工は入札を経て民間事業者により実施される結果となった(橋田 2022:775)。
協同設計方式は建築界で高く評価されたとは言えず、その凡庸さや煩雑な設計過程、また本当に労働者全員の意見を汲んでいたのかという批判も数多くあったが(伊藤 1962:94 など)、こうした「協同設計」形式は、労働組合という民主的組織のアイデンティティが空間形成に反映された試みとして興味深い。
また近年では労働組合会館の老朽化に伴い、改築される過程に言及する研究も生まれており、「会館」が形成される過程そのものが中間集団の自治のプロセスであり、改築の過程にも労働運動そのものの歴史やアイデンティティが引き継がれ、更新されることがわかる(白岩・頴原・藤本・石黒 2026)。
2-2 方法――場の活用と利用主体の社会化
中間集団の会館は単に利便性や実務性だけでできているのではない。華美な装飾が創価学会の勢力や規模を表し、共同設計が労働組合の民主主義を反映するように、会館の立地や内装、作られ方や利用のされ方が、そのままこれらの中間集団のアイデンティティを反映していると考えられる。
そのため本研究は、創価学会と連合(ないしその構成産業別労働組合)の会館を分析するにあたり、二段階の方法を講じる。第一に、GISによるデータコーディングを用いた創価学会会館・連合とその構成産業別労働組合関連施設のマッピングである。電話帳と連合の公式ホームページから取得できた限りではあるが、創価学会と連合、両者の施設の分布を比較することによって、同じように不可視化されたリベラルな中間集団の組織化のあり方の異同が見えてくるだろう。
第二に、創価学会と連合を代表する施設として、「八王子平和講堂」(創価学会、東京都八王子市)と「連合会館」(連合、東京都千代田区)の比較を行う。これらはそれぞれ、礼拝と労働運動のための組織であり、立地も用途も性質も全く異なるように見える。しかし「集まり」の場として共通した性格を有していることも、後述するデータ分析から窺えるのではないかと思う。
事例の代表性や網羅性に関してはかならずしも十全であるとは言えず、本研究はあくまで探索的なデータ分析に過ぎないが、不可視化された中間集団の実態を知る端緒となれば幸いである。
3 立地分布から見る創価学会と労働組合
GISによるデータコーディングをするにあたり、連合の構成産業別労働組合の地域支部・地方協議会・中央本部四二九件の住所データを各産業別組合・連合のホームページより収集した。また創価学会文化会館・平和会館など関連施設に関しては、外部からはアクセスが困難であるためMAPIONよりデータ六四五件を取得した。創価学会の施設は全国に一五〇〇件以上あり、また連合の構成産別組織を全て含めると四〇〇〇件以上あるため、コーディングの対象はある程度知名度・公開性の高い会館・事務所に限られる点を注記しておく。
第一に、創価学会の「文化会館」「平和会館」といった「会館」の分布を見る(図1)。全国の創価学会会館をコーディングし、DID(人口密集地区)と土地利用メッシュとの相関を検討したところ、興味深い点に、創価学会会館のおよそ三分の一が非人口密集地区、さらに土地建物用途ではない土地に建設されている。住所が公開され、相対的に大規模とされる六〇〇件ですらこれだけ非人口地区が多いとなれば、おそらくコーディングされた以外の会館はさらに過疎地・山間地にあることも想定できるだろう。分布から見られる特徴的な点として、非人口密集地区・国道沿い・島嶼部への集中がある。
創価学会の会館がこれほど広域にかつ多数分布している理由として、宗教団体であり、借りられる施設がある点が挙げられるだろう。非人口密集地区のうち離島に数多く見られる点も創価学会会館の一つの大きな特徴であるが、このような非人口密集地区・離島では個人の家や寺が人々の集まりの場となることも多い。しかし創価学会は寺社を利用することができず、また、民間・公的施設を借用することは組織の性格上困難である。実際に、公民館の運営方針として特定の政党に加え、教派・宗派もしくは集団を支援する用途に関しては政教分離の観点からもその利用について留保がつく(益川 2017)。社会教育法は一律に公民館における宗教関係者の利用を禁ずるものではないが、利用を躊躇させる要因にはなるだろう。

(図1 創価学会「会館」の分布図)
また、連合の構成産業別組織の地域支部・地方協議会・中央本部四二九件の分布は図2のとおりである。これらがすべて「会館」と特定できるわけではなく、事務所を間借りしている施設なども考えられるため、あくまで参考として見ていただきたい。創価学会の平和会館・文化会館の三分の二ほどの数であるものの、実際にはそれよりもかなり少なく見える。創価学会会館の三分の一が非人口密集地区にあるのに対し、産業別労働組合関連施設の九割は人口密集地区にある。さらに、特定地域に産業別労働組合の事務所や会館が集中しているため、相対的に施設が少なくマッピングされているように見える。

(図2 連合加盟産業別組合「会館」「事務所」の分布図)
この集中はある程度産業の地理をそのまま反映していると考えられるだろう。まず、自治労、UAゼンセン、JP労組、電機連合、情報労連、教職員組合関連施設、自治労連は四七都道府県に一つずつ置かれ、住所も県庁所在地の中心部である。これらは組合員が各県単位に均等分布しているサービス・流通・官公労・大企業系の特徴であり、交渉対象である都道府県庁の所在地にそのまま置かれることになる。
一方で、都道府県庁所在地や都市中心部以外に立地する労働組合関連施設も地図上には多く見られる。これは基幹労働組合(全日本海員組合、全港湾、林野労組、JAM(ものづくり産業労働組合))の一部であり、このような第一次・第二次産業に関しては労働組合の拠点が製鉄所・製紙工場・港湾・林産地の所在地に置かれることになる。
また、労働組合の中央本部は東京都心の極めて狭い範囲に集中している。具体的には、東京都千代田区・中央区・台東区・港区にほとんどの産業別労働組合中央本部が収まっており、これには総評・同盟の中央本部がこのエリアに集積していたという歴史的経緯のみならず、厚労省・経産省・人事院といった折衝先省庁とのアクセスや鉄道のハブとなる駅に集約されてきたこと、産業別労働組合や連合本部との連携の関連性から半径一・二km圏内に集中していると解釈できる。
創価学会(新宗教)とは異なり、労働組合は労働組合内外の施設を借用することができ、むしろ労働組合間では活発な借用・共用が見られる。同一会館へと複数の事務所が「間借り」するパターンや、「同居」するパターンも数多くあり、他の産業別労働組合や連合の施設を借りることもあれば、ホテルや会議場で会合をすることもある。
ここまで、まずは創価学会と連合の関連施設の分布を見ることで、都市空間における中間集団の可視化装置としての創価学会会館と産業別労働組合関連施設を検討した。創価学会のような新宗教が一組織で空間をはじめとする多くの資源を賄う必要があるのに対して、複数の組織の連合体である連合のようなナショナル・センターは資源を共用・融通可能であるという、それぞれの特徴が見えてくる。
ここまでは、創価学会会館・労働組合会館を検討するにあたり、立地分布から機能と活用のあり方を推察してきたが、ここからはそれぞれの代表的な「会館」にフォーカスを当て、どのような機能を持ち、どういった活用をされているのかを明らかにする。事例として、創価学会の「八王子平和講堂」、連合については「連合会館」(旧総評会館)を検討する。
4 「会館」のフィールドワーク
4-1 八王子平和講堂
創価学会の施設は全国に数多く見られるため、代表的な「会館」を挙げることが困難なのだが、ここでは立地・建築・規模においてシンボリックとされる建築の一つと考えられる八王子平和講堂について記述したい。
東京都八王子市には数多くの創価学会の関連施設が見られるが、その一つが「八王子平和講堂」である。最寄駅はJR八高線の小宮駅であるが、駅から直線で約三・一kmと、徒歩圏ではなく完全に車送迎前提の郊外立地である。前節の分析において、創価学会会館が国道沿いに多く立地していたことからも、車による来訪は会員の中である程度前提とされていることが見て取れる。周辺の創価学会関連施設として創価大学、東京富士美術館、創価学会東京牧口記念会館、創価学園があるが、この地域で最も大規模な牧口記念会館と比べると、おそらくは日常的な地域会合などを引き受ける会館と考えられるだろう。
敷地面積四八一〇・八一m²(一四五五・二七坪)、地上三階(+小屋裏空間)の会館であり、創価学会の地域施設としてはいわゆる街中で見かける小規模会館よりも大きな規模である。郊外型の独立敷地であり、広大な駐車場に加え、駐輪場・植込・ゴミ置場も見られる、地域において常時稼働を前提とした施設であることが読み取れる。主礼拝室は一階に置かれ、二階・三階は「礼拝室吹抜」となる三層分の大空間となる。一階に礼拝室、大会議室、控室複数と応接室、警備室が、上階に副礼拝室・会議室・法話室・機械室が置かれる。ポーチ・風除室を経て玄関ホールへと入館するとすぐ靴を脱ぎ、下足室に置いて廊下に戻る、伝統的な日本式の脱靴動線が敷かれている。しかし全てが日本風の設えなのではなく、会議室も数多く見られ、いわゆる伝統寺院的(本堂・内陣・外陣)というよりは公民館などの集会施設に近い設計がなされているのが特徴である。それは各室の名前に顕著であり、たとえば図面上の段階でも「本堂」などではなく「礼拝室」「ホール」「法話室」「会議室」といった名称となっている※2。玄関にはホワイトボードがあり、その日の礼拝や会合を開催する部屋が描かれている。
広いロビーと開放感のあるカフェテリア、大きな階段も印象的ながら、池田大作氏によって撮影された国内外の名所の写真パネルやリヤドロの陶器人形、アンティークの調度品など迫力がある。子どもが出入りする施設でこれほどの高級品を設するのは躊躇われるが、丁寧に扱われており、メンテナンスにも気を配られているようだ。
和室と洋室、小さな部屋から数百人収容できそうな講堂の双方があるが、多くの部屋に大きな仏壇がある。最初に入った印象としては、地元の公民館のような懐かしさも覚えつつ、裕福な友達の実家のような印象も抱いた。基本的に利用者は創価学会員のみであるが、一階・二階に設置された談話コーナーを中心とする、人々との交流の役割をもつ設備が多い点も公民館との類似点であろう(松島・落合 2024)。筆者が訪問した際は、家族単位での交流が多く見られた点も印象的だった。
駐車場がほぼ講堂と同じかそれ以上の敷地を占めており、休日は会員による交通整理が行われるほどだという話も聞いた。またホールには、創価学会関連学校の告知(駅伝など)や未来部(一八歳以下の未成年会員)のイベント報告を掲載したパネルが設置されている。いわゆる宿泊機能が明確的にあるわけではないが、被災の際に避難所となることもあれば、非会員や地域住民を招いたオープンデーなども開催されている(注1)。避難所やレクリエーションへの転用や滞在が可能であるのも、畳敷・カーペット敷の特性であろう。
4-2 連合会館(旧総評会館)
総評会館は、一九五五年五月に旧国有地である会館建設土地の払下げを受け、竣工された。一九六一年には三階が増築されたものの、労働組合運動の拡大になお追いつかず、会議室スペースの不足・老朽化に伴う補修工事の必要から新会館を建設した。一九七九年に開館工事着工、一九八一年に竣工し、二〇一二年に「連合会館」と名称変更したものの、現在も東京都千代田区神田駿河台三丁目二番一一号にある(注2)。
最寄り駅は東京メトロ千代田線・新御茶ノ水駅から徒歩三分、JR御茶ノ水駅・神保町駅も徒歩圏であり、地下鉄三路線+JRが交差する都心ハブ立地である。建物は鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)、地下一階・地上九階、バリアフリー対応。延床面積二〇九四坪(約六九二〇m²)、敷地面積三八七・五坪(約一二八一m²)であり、連合本部、関連組合・社会運動団体事務局が入居している。公益事業として外部への会議室貸出も継続的に行っている(図3)。

図3 新総評会館竣工時の広告
新会館建設費二九・九七億円のうち一四・五七億円(約四九%)が組合員一人六〇〇円のカンパにより集められている。労働組合の組織力強化に伴い、労働組合自身が資産を持つべきという感覚も強まったため、大規模なビルを建設する試みは労働運動に対する新たな意味を付与する契機ともなったようだ(白井・矢加都・滝田 1977)。
八王子平和講堂との大きな違いは、立地(郊外型か都心型か)、外部の人々による利用を意図しているか否か、建築の展開方向が縦(都心ビル)か横(郊外平面)かという点にある。連合会館は駅徒歩三分・外部利用可で縦動線中心、来館者は公共交通で来る前提であり、また産業別労働組合の地方支部・地方協議会・中央本部の立地を見る限り、利用者が公共交通で来訪する前提はある程度共通しており、少なくとも創価学会会館の利用者ほどに車での来訪は前提とされていないと考えられる。
会議室そのものは特段の個性があるわけではなく、ホワイトボードやプロジェクタを備えた、大学やシェアオフィスの会議室と大きく変わらない。労働組合の本拠地だから労働者向けなのは当たり前なのだが、いわゆる「職場の会議室」をそのまま投影したような構成になっている。労働運動ならではのモニュメントとしては、工芸壁画「働く手」が見られるが、喫茶店が隣接しているためかロビー空間には椅子や談話スペースが一切ないのも興味深い。ロビーでは月に一度クラシックコンサートが開催されるなど社会問題関連のパネル展も行われる。産業別労働組合の会館の中には組織内議員のポスターや等身大ポップが設置されている施設も多いが、ロビーにはイベント告知のポスターが控えめに貼られているのみである。
5 自治的な主体を作る場としての中間集団「会館」
ここまで、中道改革連合の支持基盤である連合(また連合を構成する産業別労働組合)と創価学会を、会員同士の相互扶助機能と組織内議員を通じた公助の要求機能を有する「中間集団」としての観点から比較の対象とし、特に両者が持つ「会館」を検討してきた。礼拝のための施設と労働運動のための施設であるため用途が大きく異なる点は強い前提としてあるが、それでもなお共通する点から、中間集団の現代社会における特徴を考えてみたい。
第一に、創価学会会館と産業別労働組合関連施設の共通点として、(両者に度合いの差はあるとはいえ、それでも)地方や非人口密集地区への設置が未だ少なくない点がある。これは新宗教が他施設を活用できない点、また労働組合関連施設が拠点として設置される点に起因しているが、このような形で立地された施設は、結果として相互扶助や公助を可視化させる装置ともなり得るのではないかと考える。本稿では厳密に比較できないが、市民団体・NPO・NGOといった社会運動団体は人口密集地区に本拠地を置き、デモやシンポジウムなどのイベントも基本的には郊外より都市部で開催する可能性が高い。また、組織基盤が安定しているため、中間集団ほどには多くの施設を維持することは難しいだろう。むしろ郊外や過疎地においてリベラルな価値を伝達するにあたり労働組合会館、新宗教会館は重要な拠点となりうるのではないか。
第二に、八王子平和講堂と連合会館を比較した際の興味深い共通点として、機能のシンプルさが挙げられる。この特徴は、よりパブリックな公民館と比べると明快である。戦後から現代になるにつれ、公民館の機能は複合化している。戦後は談話室だけだった公民館が、住民のニーズに応じて、調理室や工作室、高齢者サポートセンター、学童保育室や運動実習室を付加した複合施設となっていく(松島・落合 2024:勝又・浅野 2011)。この要因としては、利用者のニーズの多様化という背景が大きいが、より厳密には公共サービスに対して市民が「消費者化」した点も大きいのではないか。例えば学童保育を運営するにあたって専門的な工作室が必要な場合ばかりではない。しかし、消費者化した住民は、公共サービスの一部である公民館に対して「ニーズ」を訴え、公民館側ものニーズに応じたサービスを講じる。これに対し、八王子平和講堂も連合会館も、基本的には礼拝室や会議室、また会館や組織の運営をする事務室のみにとどまっており、機能としては「人の集まり」を担保するきわめてシンプルな施設である。公民館ほどに新たなニーズへの対応や、機能の多面化を志した形跡は資料からも読み取ることができない。
筆者は、市民の自治を改めて考えるにあたりこの点が非常に重要であると思う。創価学会の「会館」や連合会館で、例えば会議や礼拝以外の催しをすることがないかといえばそんなことはない。連合では地域交流と伝統文化の普及を目的に、近隣住民や会館利用団体向けにクラシックコンサートや落語会を開催している。一方で創価学会も、オープンデーには子どもとの工作イベントや本の読み聞かせなど、様々な催しを行っている。しかし、そのような用途が増えたからといって音楽ホールや工作室を作るわけではないのは、中間集団の会員らが工夫して談話コーナーやロビー空間を音楽や工作の場へと作り替えているからではないか。礼拝や会議の場でしかなかった室が、会員側の工夫によって工作室や演芸場の機能も持つ。構造に手を入れて「室」を増加させることはしないが、利用者自身が活用のため工夫することによって機能を付加している。会館の点において、彼らは与えられた空間の「消費者」ではなく、空間を能動的に変容させる自治の主体なのである。
この性格はそのまま中間集団とその構成員の特質でもある。つまり、中間集団とその人々にとって「リベラル」は、外部から評価したり、味方・仲間になったりするものではなく、自分たちが作り上げていく勢力そのものだ。こうした中間集団の在り方を踏まえると、みずから共助や公助の主体となり、都市空間であれ政治的勢力であれ主体的にインフラを活用・形成していく姿勢があるようにこそ、空間と政治の消費者となった現代の人々が学ぶべき面もあるように思われる。選挙後、中道改革連合の敗北をきっかけに「リベラルは終わった」「リベラルはなぜ嫌われるのか」といった論評が数多く見られたが、そのように評する私たちはそこに入っているのか、単なる政治ないし言論の消費者になっていないか。もしそのような自覚が少しでもあるとしたら、消費者化した我々が中間集団から学ぶことは数多くあるのではないかと思う。
註
(1)「聖教新聞」二〇二六年五月四日「〈最前線+〉垣根越えた交流目指して 地域住民や子どもも楽しめる場を提供――東京・亀有」(https://www.seikyoonline.com/article/AB34E23825CB6D8CE66A3929DA5C35B0?snstoken=96a6aa7a-5367-4e08-af1a-a00241851417 [二〇二六年五月五日最終アクセス]など)。
(2)連合会館沿革(https://rengokaikan.jp/about/history.html)[二〇二六年六月四日最終アクセス]。
(※1)『現代思想』での刊行後、創価学会研究者の方から、近年では政教分離の観点から控えられるようになったとのコメントをいただいた。
(※2)「礼拝室」などの名称は、設計図面上での名称であり、利用上の通称は異なる。
参考文献
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五十嵐太郎 2001『新宗教と巨大建築』講談社現代新書=2022『新宗教と巨大建築』[増補新版]青土社
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小池高史 2025『団地コミュニティと創価学会』第三文明社
橋田竜兵「〈住宅〉をめぐる東京土建一般労働組合の活動とその展開――戦後日本の建築運動の系譜として」『日本建築学会計画系論文集』八七(七九四):七七三―七八〇
益川浩一 2017「公民館再編下における学習・集会の自由と社会教育法第23条――宗教をめぐって」『日本公民館学会年報』一四:五〇―五七
松井昭光 1985「日本の建築運動史概説」『日本のまちづくり』一四(一〇〇):一〇一―一一〇
松島萌華・落合正行 2024「長期存続する公民館の施設空間に関する研究――まちづくりに貢献する「優良公民館」を通して」『地域施設計画研究』四二:三四一―三四八
McLaughlin, Levi, 2019, Soka Gakkai's Human Revolution: The Rise of a Mimetic Nation in Modern Japan, Honolulu: University of Hawaii Press.(=山形浩生訳・中野毅監修 2024『創価学会――現代日本の模倣国家』講談社選書メチエ)
佐々木毅・金泰昌編 2002『中間集団が開く公共性』東京大学出版会
白井泰四郎・矢加部勝美・滝田実 1977「日本の労働組合費の現状と課題を語る――アジア社研五二年度調査結果をもとに」『アジアと日本』一二(四八):四―二二
白岩透・頴原澄子・藤本貴子・石黒健太 2026「全日本海員組合本部会館の保存・改修工事(その1)――建物の概要と改修に至る経緯」『日本建築学会技術報告集』三二(八〇):四九九―五〇四
玉野和志 2008『創価学会の研究』講談社現代新書
※本稿は、『現代思想』2026年7月号「リベラルのゆくえ」特集に寄稿した論考(富永京子,2026「連合と創価学会――大規模中間集団の「会館」をめぐる都市社会学」『現代思想』54(6): 163-172. )を編集し再掲した。
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